2018年6月20日水曜日

【シングル】カバマンダ軸展開構築



◇構築詳細

■カバルドン@混乱実/砂起こし
・212-133-169-*-109-68
・地震/ステルスロック/欠伸/吹き飛ばし

■ボーマンダ@メガストーン/威嚇
・170-209-150-149-99-171
・捨て身タックル/流星群/地震/竜の舞

■ギルガルド@命の珠/バトルスイッチ
・135-222-170-*-171-112
・シャドークロー/影打ち/聖なる剣/剣の舞

■カプ・コケコ@気合の襷/エレキメイカー
・145-*-105-147-96-200
・ボルトチェンジ/マジカルシャイン/電磁波/挑発

■ウルガモス@虫Z/虫の知らせ
・161-*-85-187-125-167
・炎の舞/虫のさざめき/蝶の舞/身代わり

■パルシェン@水Z/スキルリンク
・125-147-201-*-65-134
・氷柱針/アクアブレイク/大爆発/殻を破る


◇コンセプト
・襷カプ・コケコによる序盤の安定化を追求
 序盤から熾烈なスピード展開勝負が主流な、現在のUSUMシングルでは先発に置かれるキャラの動き次第で形勢の優劣が大きく変わります。そのため先発キャラの性能として、相手から見てできる限り多くのキャラとの打ち合い有利を取れるように見えるキャラを選ぶと、相手の多くの先発キャラを流すことができてダメージレースで優位に立てるのが定石です。つまり先発キャラに必要な性能は、高い素早さ✕行動保証性能=対面性能と言えます。
 そこで有力な先発キャラとして例に挙がるのが、ゲッコウガ、カプ・コケコ、ゲンガー、フェローチェ、バシャーモなどです。僕はその中で襷カプ・コケコの
①エレキフィールドによる催眠対策
②挑発による相手の展開阻止と自分の展開補助
③電磁波による高速アタッカーの間接破壊と起点作成
④ボルトチェンジによるダメージレース優位性
⑤襷による行動保証
以上のような性能から、他のどんな高速アタッカーよりも先発キャラとして抜きん出ていると考えました。特に電磁波は襷と組み合わせることによって、スカーフゲッコウガのダストシュートを耐えながら麻痺させ素早さを落としてスカーフゲッコウガに求められる性能を無力化させられることに最も魅力を感じています。つまり電磁波が効かないキャラ以外ならば、先発のスカーフ持ちでカプ・コケコを処理してから更にストッパーやスイーパーとしての役割を担うキャラの殆どの性能を無力化させることができるため、先発キャラとして非常に安定した動きを実現させることができました。

・安定させた序盤展開からの中盤ラッシュ攻め
 カプ・コケコで先発対面の安定化を実現できたあとは、カバルドンや霊獣ランドロスなどのカプ・コケコを流しに来たキャラへの動きを考えねばなりません。そこでカバルドンならば、その多くは挑発で補助技を封じると後続のボーマンダやウルガモス、パルシェンなどの展開起点になり得ます。特にパルシェンはミミッキュで止まらないため抜き性能が非常に高く、一度展開されてしまうと今の環境トップ構築はなかなか対応が難しいのが現状です。そのためこのような展開構築はオフライン大会での上位入賞やランダムマッチレーティングの上位レート帯で最も活躍すると考えています。


◇個別解説
■カバルドン
 一番基本となるテンプレカバルドンを採用しています。汎用クッション性能として、汎用起点回避として非常に優れるこの構成にすることで、対応力の低い相手を篩落とします。
 主にカプ・コケコなどの電気タイプやガルーラやミミッキュなどの物理アタッカー、リザードンやギルガルドなどの物理も特殊も瞬間火力が高いキャラが重たいと感じたらクッションとして選出することを想定しています。

■ボーマンダ
 ステルスロックや砂天候などの微小な蓄積ダメージと合わせて耐久調整されたミミッキュを、1回竜の舞をすればメタグロス、ギルガルドなども1発で落とすために、A性格補正で捨て身タックルと地震を採用しています。相手のボーマンダとのミラー対面を優位に解決させた方がスムーズに選出構成を考えやすいため、流星群を採用しています。

■ギルガルド
 影打ちによってCSメガゲンガーやASミミッキュを1発圏内に持ち込める命の珠持ちです。このキャラでメタグロスやカプ・テテフへの圧力としながらスイーパーの役割を想定しています。ミラー対応やSの高いポリゴン2などへ少しでも優位に立つためにASにしました。その他カプ・コケコと合わせてキノガッサ対応など、幅広い課題解決力を有しています。

■カプ・コケコ
 コンセプトの襷電磁波型。殆どの構築にこのキャラは先発として機能します。そのため逆にこのキャラを出すか出さないかの検討が最も重要な選出課題です。

■ウルガモス
 メタグロスやギルガルドなどの鋼タイプへの圧力としながら、受けループなどの高耐久サイクル構築への崩しの駒として採用しています。炎の舞によってC+1されると虫の知らせと合わせて虫Z虫のさざめきでドヒドイデが処理圏内です。ラッキーに関してはC+3と虫の知らせを合わせて処理圏内になっています。臆病補正の理由は1回蝶の舞でスカーフカプ・テテフのSラインを抜くためです。

■パルシェン
 主にミラー構築や雨構築に出すことを想定しており、ギルガルドやメタグロスなどの鋼タイプで止まらないように水Zアクアブレイク型で採用しています。臆病補正にすることで岩石封じを考慮しても霊獣ランドロスを起点にでき、カプ・コケコやメガゲンガーのS200ラインを抜けます。ドヒドイデやカプ・レヒレにも遂行力を確保するため、大爆発を採用して範囲的な隙をできる限り埋めることにしました。


◇雑感
 この構築で第4回真皇杯関西予選1に参加してきました。結果は予選5勝3敗で惜しくも予選落ちとなってしまいした。最終戦でプレイングミスが目立ち、プレッシャーの掛かった状況で冷静さを保つためのメンタル面を強化していくべきとの課題が浮き彫りになりました。

2018年6月17日日曜日

【データ配布】USUMシングル種族別性能評価




以上の様に8項目の性能を80種のポケモン別に、10段階評価しました。
すべて大雑把に主観で評価したので、同様の手法で別のプレイヤーが入力すると多少の誤差が出ると思われます。

各自性能分析などに役立てて下されば幸いです。


ファイルはここからダウンロードしてください。

2018年5月29日火曜日

【WCS】JCS予選マスターカテゴリ 使用構築公開(供養)



準備期間がJCS予選本番の1ヶ月前からだったので、大方ワンチャン抜け狙いのスタンスで戦略を考えるしかありません。
ですので、環境調査をエモルガムをベースにブログ周回と現役勢への聞き込みでカバーし、既存にはないメタのアイディアで挑むことにしました。

環境調査をした結果、以下のポイントを押さえた構築が刺さると考えるに至ります。

①威嚇ガオガエンがTier1採用率で、霊獣ランドロスやボーマンダなどとの両立も多いとのことで、勝ち気ミロカロスが優秀。
②威嚇が蔓延している環境ならば、耐久調整は必然的にB方向に薄くなる。
③叩き+テラキオンで、叩き役をエルフーンやマニューラにしてしまうと、猫騙しを持つガオガエンに大きく不利を取るので、リザードンで鋼に圧力を掛けながら叩く。
④メガリザードンYにしてしまうと上からの岩雪崩やカプ・コケコの電気技のケアがし難いため、威嚇ケアも含めてメガリザードンXをCS振りオーバーヒートで採用。
⑤猫騙しによるテンポロスがテラキオン展開に大きな支障を来すためにカプ・テテフを採用し、展開後のテラキオンを保護するためにサイドチェンジ枠としても機能させる。
⑥トリックルームへの最低限の抵抗力として、テラキオンの保護のため、モロバレルを補完として採用。
⑦雨構築はすいすいのエースアタッカーが臆病や陽気で採用されにくいことを知り、スカーフゲンガーで全て上から1発圏内の打点で倒せると判断。
⑧JCS予選で避けて通れないラッキー入り構築への解決方法として、テラキオンならば聖なる剣を負担なく採用できる。

以上の要素を意識した構築がこちらです。

■リザードン@リザードンナイトX/サンパワー
・臆病153-*-136-182-105-167
・オーバーヒート/袋叩き/追い風/守る

■テラキオン@命の珠/正義の心
・意地っ張り167-199-110-*-110-160
・聖なる剣/岩雪崩/ストーンエッジ/守る

■ゲンガー@拘りスカーフ/呪われボディ
・臆病135-*-81-182-95-178
・シャドーボール/ヘドロ爆弾/エナジーボール/サイコキネシス

■モロバレル@気合の襷/再生力
・生意気221-*-104-105-130-31
・エナジーボール/ヘドロ爆弾/怒りの粉/キノコの胞子

■カプ・テテフ@エスパーZ/サイコメイカー
・臆病165-*-95-165-135-159
・サイコショック/ムーンフォース/日本晴れ/サイドチェンジ

■ミロカロス@ビビリ玉/勝ち気
・臆病171-*-99-152-145-146
・熱湯/凍える風/目覚めるパワー草/守る


テラキオンが意地っ張り珠なので、全体補正のA+4岩雪崩でも177-136カプ・レヒレを確定1発で落とせるだけの火力を持ち、ストーンエッジでは227-189クレセリアも確定1発で落とせます。
その圧倒的な物理火力を活かして短期戦で決着を付けなければ、準備期間が短かったので長引く程実力負けが濃くなります。


基本選出は、実戦経験によって精度が上がった結果、先発に"リザードン:テラキオン"の並びで後続に"カプ・テテフ:その他どれか"を置くのが最適だと結論付けられました。
ですが、当初はミロカロス依存の選出をしていたため、初動の勝率が安定せず15戦消化してもレートが殆ど上がらず、残りの30戦では勝率5割り維持がやっとでした。


そのような苦闘の結果、自分の最終レートは1514で、惨敗に終わりました。
やはりWCSは準備期間を最低半年は見積もって用意した方が良さそうです。

2018年5月18日金曜日

【雑記】メタゲームと環境変遷 -環境を進める行為とは-

シーズン9を振り返って

シーズン9の結果を回収していたら、やはり前シーズンで話題性が高かったのは「みがわりバトングライオンを中心とした局所的なメタゲーム」だったように思います。

以下参考
最終2173 結論asamiループ

本来のテンプレグライオンは地震/ギロチンor毒/守るor羽/身代わりであるため、身代わりボーマンダのような地震が効かないポケモンの身代わりを壊すことが出来ないため、グライオンを見れば大方のプレイヤーは身代わりボーマンダで対応していました。実際、前シーズンまではそれで解決できていたため身代わりバトングライオンは、当初ノーマークだったからこそレートが躍進し、マッチングした他のプレイヤー達も影響を受けて同様の型を使いだし、一時的に環境トップメタ状態になったと考えられます。

新型グライオン躍進のメカニズムにせまる

では、何故身代わりバトングライオンが強いのか、簡単に説明してみましょう。

・テンプレ(選出画面で大多数のプレイヤーが想定していた型)
グライオン@毒々玉 ポイヒ HD,HS,AS
地震/ギロチンor毒/守るor羽休め/身代わり
・上記のテンプレは先述のように「地震で割れない身代わりが使えるポケモン」に圧倒的不利を取る。
・例:ボーマンダ、テッカグヤ、グライオン、ジャローダ等
・以上のポケモンはグライオンに後出しから処理可能として繰り出されることが多い
・以下、シミュレート
①グライオンの起点になる自陣のポケモン(ギルガルド等)が交代する:相手グライオンが身代わり
②繰り出されたポケモンが相手グライオンを起点にするため身代わりを使う:相手グライオンは身代わりを残したままバトンタッチで高速ATへ繋ぐ
・グライオン側が身代わりを残したまま繋いだ高速ATがフェローチェやカプ・コケコ、メガゲンガー、ゲッコウガ、アーゴヨン等であった場合、グライオンに身代わりが残せるポケモンよりも速いので打ち合いで勝ち残り、大きなアドバンテージを得る。

前シーズン末期ではまさにこんな局面が多発していたはずです。

このグライオンはミラー対面でも同じ動きができるため、最終的にバトン先のSが高い方が有利であったと結論がでてきます。
そう、このため最速襷フェローチェが採用されていたと考えて問題ないでしょう。

テンプレ型の数とメタの鋭さの関連性

このように、「テンプレ型しかいない」との前提条件が成立するポケモンは、「テンプレ型だけへのメタで構築が完成する」との認識を受けやすいようです。
そのため今回のような「テンプレ型だけをメタった相手を強烈にメタる」戦術が生まれます。このような戦術は一度シーズンが明けた後に誰かしらから否応なく公表され、新しいテンプレ型として認知され、テンプレ型全体の解決方法が研究されて次の環境に移行していきます。今シーズンからはグライオンにボーマンダを投げる人は減るでしょうし、グライオンに最速フェローチェを投げたり、挑発身代わりグライオンや挑発身代わりジャローダなども使用されるかもしれません。

では仮にテンプレ型以外に考え得る限り全ての型に対応したメタというものはあり得るのでしょうか。
実は、その完全対応メタに値するポケモンこそが、一般的に「流し」と呼ばれる役割を持つポケモンと言えます。

今回のグライオンに関して言えば、「流し」とは氷柱針が使えるマンムーやパルシェン、一貫した音技が使えるアシレーヌなどです。
この辺りのポケモンは「流し」性能が露骨に高いため、一般的には行動回数(何回流しとして場に出せるか)を上げるために耐久を高めるか、役割遂行力(流れた先を倒す性能)を上げるため火力を高めるかのどちらかの調整が採られることが多くなります。

環境変遷の意味とプレイヤーの目的

以上のように前回流行った戦術に対する解決策がこの記事等で紹介されたとしましょう。現段階で紹介された解決策がこの後の環境で流行するでしょうか?
僕はそうは思いません。ここで挙げたような解決法や、別の解決法があったとしても、それを「公言してしまった」段階で、環境を進めた以上の成果は何も得られません。

対戦ゲームで一つの課題に対する解決法を、ある程度影響力を持ったプレイヤーが提示したとして、そのプレイヤーは自分がアイディアを秘匿して実績に結びつける手段を放棄してまで、解決法を公開したメリットは「環境を進めた事自体への称賛」を得る以外には無いはずです。

しかし、現在のポケモンプレイヤー達の最終目的は「レート実績を得る」ことではなく、「レート実績を使った名声と称賛を得る」ことと「レート実績よって達成感を得る」ことと言えるため、手っ取り早く周囲から称賛を得られるならば、情報の秘匿はなかなか発生せず、殆どのアイディアはSNSやDiscord、Skypeなどで自然に流出していきます。

これは特にシングル界隈でよく起こることで、WCSのような非常に大きな大会があるダブル界隈ではあまりこういった情報の意図的な流出は見られません。

シングル界隈では、この意図的な情報の拡散を「環境を進める」と言った意味で肯定的に受け取られているところがあります。
では、環境を進めることは、最終的に何をもたらすのでしょうか。環境を進めた先に、完全な環境の停滞は起こるのでしょうか。
少なくとも、環境が進む毎に変遷速度は減速していくことは間違いありません。つまり、環境は進めば進むほど代わり映えしない状態になっていきます。

そして、ポケモン対戦は環境を進めることが目的のゲームではありません。基本的には皆が皆「勝率の最大化」を追い求めて取り組んでいるはずです。(負け続けて負の感情が湧くのであれば、逆説的に勝率の最大化を狙っていたと言えるため。)そうした中で僕は、進みきって停滞した環境で最も適したプレイヤーほど、環境を進めたがらない傾向があり、逆に環境を進めたがるプレイヤーほど、環境末期で実力を発揮しづらくなる傾向があると考えています。

つまり、環境を進めてもそれを称賛する人がいなければ誰も得しないのです。

情報の価値とプレイヤーの戦略

今後ポケモンプレイヤー全体で情報の価値と知財意識が向上しない限り、コミュニティを隔てた内部情報リークや対戦相手からの情報流出等で開拓重視のプレイヤーは非常に不利な状況に追いやられるのが一つの定説となり、ソロプレイの開拓派プレイヤーは数を減らすでしょう。
今後、開拓は様々なプレイヤー同士のコミュニティ単位で進むものとなり、より集団的な活動が増えると予想します。

ポケモン対戦でのプレイヤー戦略は、ゲーム内だけの過程や結果だけで説明がつきません。
必ず、プレイヤーそれぞれの目的に沿ってSNS等を介したコミュニティでの活動が伴った、複雑な思惑によってダイナミクスを形成していると考えられます。

以上より、ポケモン対戦でゲーム理論が完全には通用しない一つの理由が示されました。

今後はこのようなダイナミクス要因を含めてもゲーム理論によってどこまでの成果が得られるか考察を深めていきたいと思います。

2018年4月9日月曜日

【雑記】シーズン9上半期・個人レポート

前期終盤でレート戦に復帰してからの活動を記します。

前期終盤

ハガネール@混乱実 勇敢HAD最遅
ジャイロボール 地震 ロックブラスト 鈍い

ボーマンダ@ナイト 意地HaDs
八つ当たり 地震 竜の舞 羽休め

リザードン@ナイトY 臆病CS
大文字 ニトロチャージ ソーラービーム めざめるパワー氷

ミミッキュ@ミミッキュZ 意地AS
戯れ付く 影打ち 剣の舞 挑発

カプ・コケコ@拘りスカーフ 陽気AS
ワイルドボルト ブレイブバード 自然の怒り 蜻蛉帰り

パルシェン@珠 うっかりやCS
氷柱針 ハイドロポンプ めざめるパワー電 殻を破る

レート戦復帰の際は手始めに、俗に言う共有パ(カバマンダガルドコケコゲッコツルギ等)の情報を仕入れて、環境の把握から始めることにしました。

そして、共有パの成り立ちを考察した結果、エレキフィールドやミストフィールドの影響でカバルドンの欠伸の価値に疑問を持ち、欠伸が無ければ鋼枠の圧縮と頑丈特性が付与できるハガネールの方が、カバルドンよりも性能が高いのではないかと考えるに至ります。

実際、ハガネールは欠伸の無いカバルドン以上の性能を発揮できました。
高いB耐久と鋼耐性による、ミミッキュの剣舞Z攻撃からの流し、最低限のカプ・テテフ流し、カプ・コケコへの強力な流し、ボーマンダへの流しなど。

これでレートは最高1968まで伸びましたが、勝ち切れず、2000までは届かずの結果に終わりました。

その原因は、カバルドンをハガネールにしてしまったことからメガリザードンXへの対応力が落ちてしまったことや、流した後の相手への負荷が足りなかったこと、具体的には流れた先にカバルドンがいた時の手詰まりなど、実戦でのプレイで問題が山積したためと考えています。
今はハガネールを組み込むならば、後ろにカプ・レヒレを採用してカバルドンやメガリザードンXなどへの圧力を確保する組み方を考えています。

そして、環境トップと位置付けた共有パへの解決策はスカーフ物理カプ・コケコの蜻蛉帰りでスカーフゲッコウガもケアしながら、呼んだカバルドンへ小ダメージを与え、メガリザードンYの晴れ大文字か、受けループ対策枠を兼ねる珠パルシェンのハイドロポンプでHDカバルドンも含めて落とし切る動きで大凡解決可能であり、実戦の勝率も7割を超えました。

しかしながら、環境トップのパーティ構築へのメタは完成していましたが、その他のパーティ構築への対応力は決して高いとは言えず、全体勝率は6割でレートは伸び悩みんで終わります。

この頃はまだ環境トップへのメタしか意識がついて行かず、大多数を占めるその他のパーティへの対応力を確保できませんでした。

その反省を活かし、今期はまずテンプレ共有パを実際に回してプレイの核心を理解しようと取り組みました。

その結果、テンプレ共有パはボーマンダの羽休めと混乱実カバルドンによる有限サイクルでステルスロックのダメージを稼いでボーマンダの崩せるダメージ範囲内に落とし込むプレイをコンセプトとしていることに気付き、そこで高度なプレイスキルが要求されていることが分かりました。

つまりそれは、先発をゲッコウガ又はギルガルドなどからスタートし、相手が先発に置きやすいカプ・コケコの電気技をカバルドンでカットしてから、その直後の釣り交代が高い確率で決まりやすく、そこで序盤の安定的な様子見段階から中盤の反転攻勢に切り替わるプレイなどに現れています。

このような仕組みは、単にそのパーティ構築のレシピを見ただけでは分かりにくい、パーティ構築それぞれの定石にあたる動きから形成されており、それを各パーティ構築ごとに読み解く必要性を感じました。

その結果、やはりスカーフ物理カプ・コケコの蜻蛉帰りからのプレイはゲッコウガ入りに対して普遍的に強いプレイを押し付けやすいことに、より確信を持つに至りました。

その動きを踏まえると、スカーフカプ・コケコの蜻蛉帰りからゲッコウガに繋ぐ動きで基本的に共有パは解決可能と考えられ、構築の2枠で環境トップへのメタを完結させられます。

そしてそこで、スカーフカプ・コケコでメガリザードンYが解決済みとした上でのメガリザードンXの解決策はHB特化カバルドン、又はHB特化霊獣ランドロスによって可能だと考え、カプ・コケコ@スカーフAS+カバルドン@混乱実HBor霊獣ランドロス@混乱実HB+ゲッコウガ@襷の3匹が現環境の上位構築全体への対応力が高いと考察しました。
しかし、このままでは先発ギルガルドの霊Zシャドーボールが受かりにくく、ギルガルド・リザードン・カバルドンの並びが厳しい。
つまりクッション枠はHB特化カバルドン級の物理耐久とギルガルドの霊Zシャドーボール耐えの耐久を両立しなければ、先発スカーフカプ・コケコは安定しません。そのため補助技依存のカバルドンでは限界を感じ、HBチョッキ霊獣ランドロスに活路を見い出しました。

ここまで考えた結果、霊獣ランドロス/カプ・コケコ/ゲッコウガまでが決まります。つまり環境上位への対応力はここである程度確保されたと言えるため、残りは基軸となるメガシンカとZ技持ちを入れてメインの崩しコンセプトを設定します。そこでやはりメガボーマンダと霊獣ランドロスの氷技の一貫性が問題となりますが、それはボーマンダや霊獣ランドロスが氷打点を受けるタイミングでの交代の意識はカバルドン使用時と大差がないので、並びの美的感覚の問題であると判断し、霊獣ランドロスとボーマンダの並びを採用することにしました。

そして、スカーフカプ・コケコがスカーフゲッコウガに蜻蛉した時に居座られた際にはダストシュートを想定し、鋼タイプを控えておく必要があります。それを、カプ・コケコの蜻蛉帰りと合わせてカバルドンを落とせる霊Zシャドーボールのギルガルド又は鉢巻カミツルギのどちらかを鋼枠として採用すべきとなりました。

そこで、二者の比較材料は鋼としての特殊耐久、つまりカプ・テテフの眼鏡サイコキネシスを2発受けて流せるかどうかに掛かります。その点と、カプ・コケコと合わせてのキノガッサ対応性能も含めて、霊Zギルガルドが決まりました。

また、メガボーマンダは無邪気AS(威嚇/八つ当たり/火炎放射/竜の舞/身代わり)とすると、受けループのヤドラン、バンギラス以外の広い範囲に解決力を有するため、残り1枠は対受けループ用の崩し枠として、ヤドランやバンギラスに対応できる駒でなければなりません。それはウルガモスではないでしょうか。ウルガモスならば、受けループ側の選出優先度ではバンギラスよりもラッキーを選出させられるのと、一致の虫のさざめきがバンギラスに弱点を取れてヤドランにも、一貫性が保てます。その為、構成は控え目CS虫Z(虫の知らせ/炎の舞/虫のさざめき/蝶の舞/身代わり)とします。

つまり、全体はこうなりました。

今期序盤

霊獣ランドロス@突撃チョッキ 呑気HB
地震 岩石封じ めざめるパワー氷 蜻蛉帰り

カプ・コケコ@拘りスカーフ 陽気AS
ワイルドボルト ブレイブバード 自然の怒り 蜻蛉帰り

ボーマンダ@ボーマンダナイト 無邪気AS
八つ当たり 火炎放射 竜の舞 身代わり

ウルガモス@虫Z 控え目CS
虫のさざめき 炎の舞 蝶の舞 身代わり

ギルガルド@霊Z 控え目HCS
シャドーボール 影打ち 毒 身代わり

ゲッコウガ@襷 せっかちCS
熱湯 水手裏剣 凍える風 蜻蛉帰り

これでシーズン開始直後の10日間で1ページ目(最高1932)までは到達出来ましたが、その後に色々な構築案を試す過程でレートを落としてしまい、現在の低迷に至ります。

近頃は、意地ASメガボーマンダを自信過剰で使い、死に出し状態で無駄なく火力を得る方法を試したり、ボーマンダ@水Z意地AS(自信過剰/逆鱗/地震/アクアテール/竜の舞)でHBカバルドンを誘って落とす戦術などを実験しています。

今期の終盤環境はカバマンダが環境に残るのかが、プレイヤー達に注目されるでしょう。

2018年1月11日木曜日

【雑記】対戦理論の目的と究極の答え

※この記事は雑記なので、あくまで"方向性"を示すまでに留めます。

戦術︰例えば、「今の構築では受けループには◯◯を使って〜〜の手順で対応しよう」とか「◯◯は□□を呼ぶから、〜〜な型にして誘い殺そう」のような戦略内で発生する個別の課題に対する具体的な解決手段。

戦略︰例えば、「今シーズン最終レート2100以上、最終順位◯位以内」のような、最終的な目的を達成するための抽象的な解決手段。「シーズン前期に構築開発、中期に実戦練習、後期に環境分析と使用構築の決定」のような長期的な計画から、「前シーズンは高耐久寄りのサイクル構築が多かったから、今シーズンは高火力重視で対面構築寄りの手早い戦術を採用しよう」のような戦術の上位概念として扱う。

トップダウン式構築法︰最初に理論や理念、戦略ありきの構築法。抽象・目的→具体・手段の手順。演繹的とも言える。例えば、「前シーズンは高火力重視の対面構築が伸びたから、今シーズンは要塞型を多用した積み構築を組もう。それを実現するために鈍いリサイクルカビゴン等の条件を満たす要塞型を集めよう。その中で今の環境に一番刺さる軸を作れるポケモンはいないか検討してみよう。」のように、土台や骨組みから組む構築法。つまり、目的に応じて各プレイヤー達が抽象的な概念を定義してからでなければ使えないと考えられる。

ボトムアップ式構築法︰例えば、「ボーマンダが強いと思うから、ボーマンダを使った構築を考えよう。ボーマンダはポリゴン2とかゲッコウガに相性が悪いから、どっちも解決出来るフェローチェを採用しよう。氷技への引き先としてカプ・レヒレを採用しよう。鋼と地面が欲しいから、それぞれギルガルドとカバルドンを入れてみよう。……」のように、単体考察とテンプレ知識などの組み合わせで大雑把に構築し、その後早い段階から実戦で試して課題を見つけてそれを一つ一つ解決させながら練り込む構築法。早期に実戦経験も積めるため、プレイスキルの上達も見込み易い。現状、殆どのプレイヤーがこの構築法で構築している。


ここ最近の私がやたらとポケモンの対戦理論を考察している理由の一つに、ほぼ完全なトップダウン式構築法を実現したいからという目的があったわけです。
そのために、対戦理論の一環として戦術を定義→分類し、それを包括する戦略も定義→分類しようとしています。
何故こんな回りくどいことをするかと言えば、それは私の単なる趣味とも言えますが、一度理論が完成してしまえばその後は理論を応用して半ば機械的にトントン拍子で勝てるはず、という科学的な理念、人によっては宗教とも言われるかも知れない考えが根底にあるからです。
つまり、仮に最終的な目標を"普遍的最強のポケモンプレイヤー"(≒"神"と宗教視点では言えるかも知れない)と位置付けると、それはもはや"ポケモン対戦での普遍的な勝ち方を提示したプレイヤー"とも言えて、レート実績や大会実績などの実績主義では漠然とした強さの物差しでしかプレイヤーを評価出来ず、その時々でのSNS世論に依存したプレイヤー評価の曖昧さを解決出来るかも知れないとの期待もありました。

……ポケモンでやることじゃないですね笑

つまり、ポケモンも含めて私たちが対戦ゲームを娯楽目的のスポーツとして考えなければ、一プレイヤーがストイックに強さを求めた果ての究極は、各々が如何に自己満足出来る地点を見出すかどうかにあるのではないでしょうか。

WCS優勝者やシングルレートシーズン最終1位経験者達が、燃え尽き症候群に駆られるのも、現状満足してしまって次なる目標が見付からないからと言えるかも知れません。

そういう意味で、競技に参加する選手達のスポーツマンシップや観戦者達の民度、その競技自体の社会的な位置付けなどは、その競技でストイックに努力して栄光を勝ち取った覇者にも、その競技を続ける意味を左右する要素であると思いました。
つまるところ、現状ポケモン対戦を競技としてプレイするとどうしても天井に届いてしまうと言えます。
その天井に届いた、又は天井の存在を理解した人が、その上でポケモンを続けられれば、心底ポケモンが好きだと言えるのかも知れませんが、私の知る限りそんな人は数える程しかいませんでした。

これはどの対戦ゲームにも言えることでしょう。

そんな意味で「勝負師人生は修羅の道」と、ここでの答えを示してこの記事を締め括ろうと思います。

2017年12月21日木曜日

【雑記】シングルレート環境の"見えざる手"

ポケモンのシングルレートにおいて、出来る限り順位を上げるため、日々熾烈な競争の果にレートを積み上げるポケモンプレイヤー達。
ランダムマッチレーティングバトルのサービスが開始された2011年頃の第5世代BW期からというもの、現在の2017年が終わろうとしている第7世代USUM期まで、様々な戦略、戦術が研究されてきた。
その中で読者達は、「既存にないポケモン単体の型の新案を開発する」という戦略的解決手段をパーティ構築時で採った経験はないだろうか。
実際筆者自身も、環境メタを目的とした上で汎用性を重視した直接的な解決手段として過去に何度も「新型のポケモンを開発」してきた。しかしながらその開発(開拓と呼ぶ人もいる)を行うには、それまでに膨大な時間を費やした環境分析と対戦経験の蓄積、そして何より閃きが必要であった。幸い筆者には、その閃きが起こりやすいという意味でのセンスが備わっていたようで、残りの要件を満たせば自ずと新型の提案は幾らでも可能となるにまで至った。
ところが、近頃他のプレイヤー達の提案も含めて、新型の本質的な特徴、性質、開発手法、実践効率までを考察するようになってからは、新型の開発は一つの戦略的手段でしかなく、むしろそれが必要とされるパーティ構築は実践効率が非常に悪かったということを認めざるを得ないと考えるようになった。

新型の開発を含めてのパーティ構築はとても楽しいものである。頭脳のクリエイティブな領域を使用するため、その時のプレイヤー達は謂わばアーティストの感覚で芸術作品を創作するのと似たような高揚感を感じているはずだ。

しかし、ポケモン対戦はゲームである。つまり対戦相手が存在し、多数のライバル達との競争を勝ち抜くことこそが、ポケモン対戦の真髄である。そのため、芸術だけでは理想主義に囚われ行き詰まりやすい。実際、筆者に近いプレイヤーもその理想主義に囚われていることに気付かず、次第にゲームで勝つための考察から離れていったことがある。
それでは、ゲームで勝つための考察とは何か。それは考察にかけた時間も含めて、最低限の準備時間で最大限の成果を得る為に、全てのバランスを意識した上で、目標(レートであれば最終1位や2200など)を達成するのに最もベストな計画を練ることであると考えている。
もちろんその中で新型の開発が無理なく可能であるならば強力な手段であることには変わらないが、基本的には労力に見合った成果は得られにくい。
というのも、汎用性が高くその当時の環境を進める程の新型の提案とは、環境メタであると同時に、それを含めての単体性能の最大化であると考えている。例えば、筆者が過去に開発した第6世代での203ガルーラやオボンHB悪巧み化身ボルトロスなどは、当時の環境に対して強烈な刺さり方をしていただけでなく、その公表後長らく"強い型"として様々な構築に採用された。謂わば"強い構築パーツ"として便利に機能していたわけである。そしてそのガルーラやボルトロスなどが、バシャーモのバトンタッチからの展開も含めると戦術に更なる幅が効き、そういった単体性能が他と一線を画す"強い構築パーツ"を組み合わせた並び、つまりは"強い構築パッケージ"を更に繋ぎ合わせて第6世代厨パが完成した経緯がある。
そうした"強い構築パーツ"や"強い構築パッケージ"を体系化していくと、強い構築が格段に作りやすくなる。
要素を出来る限りパッケージ化することで、構築が簡単になりパッケージ同士のパズルだけで構築が組めるようになったため、様々な構築を検討するスピードが上がった。

しかし、第6世代のシーズン12辺りを境にその手法は効力を失っていった。

パッケージ構築法から生まれた第6世代厨パとそれを好んで使用していた筆者周辺の過ち、それはつまり全てのポケモンが"強いパーツ"であり、"強いパーツのみの集合体"こそが唯一無二の最強構築であるとする理想主義に囚われていた結果、当時のクレセリアのような隙が多く比較的単体性能が良くないサポート特化のポケモン、型に対しての柔軟な考察が遅れたことにあると考えている。
つまり、アグレッシブな戦略ばかりに固執してしまっていたとも捉えられる。
それは第6世代レートの各シーズン結果より明らかであった。
上位の構築の殆どがクレセリアもしくはカバルドンのゴツゴツメット持ちで安定回復型の物理クッションを採用しており、厨パのようなスイクンのみでのクッションでは、メガシンカによって火力が上がった環境においてプレイが非常にシビアとならざるを得なかった。

アグレッシブな戦略は、選択肢の限定と言う意味で諸刃の剣である。
アグレッシブな戦略に対し攻守バランスの良い戦略では、序盤を撹乱してでも凌げば後はリソース勝負で決着が付く。
つまりアグレッシブな戦略には、戦略面でメタが張りやすい。

その事例は第7世代になってから更に、顕著に現れている。
当初はカプ系統のフィールドやZワザの火力などから火力インフレが予想され、コントロール戦略は淘汰されるであろうとの意見が拡がった。
しかしながら、今思えばその予想は浅はかであったと反省せざるを得ない。
筆者は第6世代後期に高耐久クッション入りのバランス型構築が最終的に覇権した事例と、カプ系統のフィールド、Zワザのいずれもターンを稼いで凌げば残りは、リソース勝負で決着が付きやすいとする戦略を軽視していた。
実際、第7世代SM中期から後期にかけては、極めて保守的なサイクル構築が多く上位に上がったことからも窺い知れる。

しかし、第7世代はそれだけではまだ終わらなかった。
SM期最終シーズンの結果は、各ポケモンを対面性能に寄せた構築の躍進によって終わったのである。
つまり、保守的なサイクル構築が増えた結果、試合展開が長引き終盤でプレイがシビアになったために勝率が伸び悩んだのであろう。

その事例から、ポケモンの単体考察によって環境を進めるといったスタンスが低次元に成り下がったことは明白である。
それはもはや一つの選択肢でしかないし、現在ではそれが実現出来るとも考えにくい。

最終的には結局、対面性能重視枠3、コンセプト遂行枠1、高耐久クッション1枠、崩し枠1のようなバランス型構築で、序盤慎重なプレイがマジョリティを制するような"見えざる手"によって環境が固まっていくものなのであろうか。

2017年12月4日月曜日

【ポケモン竜王戦】スカーフレックウザ対面構築

簡易更新

化身ランドロス@襷/力づく
165-130-110-167-100-168
大地の力/撃ち落とす/目覚めるパワー氷/ステルスロック

カプ・コケコ@カプZ
167-*-105-115-106-200
放電/マジカルシャイン/草結び/自然の怒り

レックウザ@スカーフ
181-255-120-200-108-167
画竜点睛/流星群/Vジェネレート/神速

ハッサム@イア/テクニシャン
175-170-150-*-100-63
バレットパンチ/蜻蛉返り/剣の舞/バトンタッチ

エンテイ@食べ残し
209-136-106-*-108-167
聖なる炎/毒々/身代わり/守る

ミミッキュ@ゴーストZ
131-142-100-*-125-162
影打ち/呪い/身代わり/守る



最終1750程度
途中からプレイが洗練されていった結果、エンテイとミミッキュに諸説アリとの結論

竜王戦お疲れ様でした
非常に楽しめました

2017年7月31日月曜日

【シングル】第7世代のための新役割理論 -対戦理論記事連載第2弾

近頃、役割理論などかつてのシングル対戦理論が通用しない実戦の立ち回りを見て、この第7世代特有の立ち回りや構築の理論を体系化してみようと試みた。



この動画は、第三回真皇杯 本戦の決勝戦、マイケル氏とA0氏の対戦である。
これは正に第7世代のシングルバトルを象徴するかのような対戦動画であろう。

このような第7世代を象徴するかのような対戦は、従来の役割理論では網羅できず、現在の立ち回りや選出、構築などを体系的にまとめた他の対戦理論は存在しない。
そのため、私自身の理解を助けるためという理由もあり、以下にまとめようと思う。


◇従来の役割理論
これについては前記事を参照して頂きたい。
【シングル】役割理論について簡単に解説 -対戦理論記事連載 第1弾

それを踏まえた上で、現状の役割理論の問題点の解決策と、役割理論の原案を記した最古の文書をベースに以下の新役割理論を展開する。


◇現状の役割理論
第7世代のシングルバトルでは、先程の動画のように強力な特性やメガシンカ、Z技によって、ポケモンが「受け」の「防御側の役割理論」で戦うことが非常に困難になってしまった。その結果、現在では「流し」や「誤魔化し」の「攻撃側の役割理論」の組み合わせによる交代戦でのサイクルになっている場合が多い。
そのため、従来通りの「受け」「流し」「誤魔化し」などの役割のみでは説明が出来ず、加えて第5世代以降、「対面構築」「決定力と抜き性能」「行動保証」「対面操作」「役割集中」などの新たな用語も生まれた。以上の内容を踏まえ、役割理論の再構築が必要だと考えた。
これらは従来の役割理論には無かったり、応用された考え方であり、その他ポイヒグライオンやキノガッサ、やどみが、食べ残し毒身代守る等のループ嵌め戦法、壁やバトン展開からの全抜きなどのギミック、特性や技を駆使した天候やフィールドの取り合い、その他戦術としての「読み」や「ケア」、「釣り交代」などを含めると役割理論通りのサイクルは実戦では殆ど発生しない。
むしろ、役割理論のサイクルは選出画面で各プレイヤーは多くの選択肢を想定し、それを踏まえて対戦の大局を計画し、選出を確定するといった最初の段階の思考法として、また毎ターン、ダメージレースの優劣判断からの軌道修正の前提理論として機能している。


◇役割理論黎明期の原案(最古の役割理論に関する文書)
for Gym Leaders. by Hidaka
まずは上記の記事(Hidaka氏が2001年作成)をご覧頂きたい。
これによると、従来の役割理論でしばしば説明されてきた、「受け」や「流し」、「役割破壊」などの記述はなく、「駒」と「役割」の関係性と、「駒」の動かし方の鉄則、選出時に「役割」を「駒」に与えるべきとするなどの事項のみが記述されていた。
そして最終的な目的は勿論「勝利」であり、そのために必要な局面であればリスクを負った「読み」や相手のハイリスク行動を阻止するための「ケア」にあたる概念も取り込まれている。
つまり、役割理論とは、本来は「受け」や「流し」や「サイクル」といった今の凝り固まった認識とは違い、もっと柔軟であり、正にシングルバトルの根幹を説明し得る理論である。
また、第2世代で現役プレイヤーであったゴールド氏などに話を聞く機会があり、彼からは「今、巷で良く見る役割理論はしゃわ氏がHidaka氏の役割理論を応用させて第2世代用に体系化させたものだったんです。彼の凄いところは、文章でしか伝わらなかった役割理論を初めて記号化させてすごく扱いやすくしたことで、第2世代以降のシングル対戦に革命を起こしたことなんですよ!」と、今まで私が知り得なかった役割理論黎明期のエピソードを深く語って頂いた。


◇選出画面からの各プレイヤーの思考、行動

・選出画面から
1 構築の基軸で相手のPT全体に勝てるかを判断する。
2 役割理論に基づいて、相手のPT全体と自分のPT全体を見ながら、ダメージレースでの動きを予測し、「崩し」が必要なポケモンを見つける。
3 1,2を踏まえて考えた幾つかの選出案の中から最も勝率が高い選出を判断する。

・対戦開始から
4 先発対面の優劣を判断し、居座れるかを判断する。
5 先発で居座れると判断した場合、相手が交代して対面の優劣が逆転しても対応出来る方法を、「読み」による役割破壊技を打つか、相手が敢えて居座って来ることを想定し「ケア」するか、「釣り交代」して有利対面を維持させるかを判断する。
5’ 居座れないと判断した場合、普通に交代して有利対面を作るか、相手の「読み」による役割破壊技や「釣り交代」を「ケア」した交代先の検討、敢えての居座りを判断する。
6 相手が「崩し」の必要なポケモンを繰り出したとき、それを選出段階での計画に沿って対処する。
7 暫く4、5、5’、6を繰り返してダメージレースが進行する。その際、毎ターンの結果によって勝ち筋の計画を修正していく。
8 終盤になり、ダメージレースの結果が確定して勝敗が決する。


◇「山」と「崩し」
ここで重要になるのが、新たな役割概念の「崩し」である。
「崩し」が必要なポケモンとは、例えばHBクレセリアや輝石ポリゴン2などの数値的な「受け」の役割を持つポケモンであったり、やどみがテッカグヤとかポイヒグライオンなどの無限ループ嵌め型のポケモン、竜舞羽身代わりメガボーマンダなどの高耐久の展開ポケモン、カプ・コケコやフェローチェ、ゲッコウガ、メガゲンガーなどの高速アタッカー、ミミッキュや襷キノガッサなどの対面での打ち合いに強いポケモン等が挙げられる。
また、「崩し」が必要なポケモンをここからは「山」と表現することにしよう。これらは相対的な概念であり、◯◯は△△へ「山」の役割を持つとか◇◇は◯◯の「山」へ「崩し」の役割を持つというように使う。したがって、「山」の役割に対する「役割破壊」が「崩し」という意味であり、複数のポケモンに対してそれぞれ「山」と「崩し」を併せ持つ竜舞羽身代わりメガボーマンダのようなポケモンも存在し得る。
それら、自分のPTから見ると「山」となるポケモンは、選出段階から圧力がかかり、自分のPTから明確な「崩し」が可能なポケモンの選出を強要されている。
つまり、現在のシングルバトルでは「山」となるポケモンと「崩し」が可能なポケモンの競り合いとして説明がつくと考えた。

この段階まで来ると、従来の役割理論の拡張が必要なため、「新役割理論」としてこれから再構築していく。



■新役割理論

新役割理論は、従来の役割理論の理念を公理として拡張させていくこととする。
そのため、従来の役割理論で使われた用語である「役割」「役割破壊」を始めとして「受け」や「流し」、「誤魔化し」も原理として扱う。
その上で、先程述べた「山」と「崩し」の概念を取り入れ、ドグラ氏の記事で提唱されていた「決定力」と「抜き性能」の概念も「崩し」の成分として取り入れることとする。

それらを踏まえて、新役割理論では第7世代のシングルバトルを「自分は相手より高い山を置いて、相手の山を全て崩すゲーム」であると表現しよう。つまり、「相手の山を全て崩せなければゲームに敗北する」とも言える。そのため、ポケモンのカテゴリは「山」と「崩し」、「山を崩せないポケモン」の3つに大別される。

ここからは「山」と「崩し」をカテゴライズし分類していく。


◇「山」と「崩し」の分類(後述のデータ処理のため仮設的に配置)

●山

▶防御の山

①「受け」の役割を持つポケモン:HBクレセリア、輝石ポリゴン2、輝石ラッキー等

②永久回復+身代わり+守るが使えるポケモン:ポイヒグライオン、食べ残し宿り木テッカグヤ、食べ残し毒スイクン等

③積み技+回復技が使えるポケモン:メガボーマンダ、カビゴン、クレセリア、カバルドン等

④吠える又は黒い霧が使えるポケモン:カバルドン、ドヒドイデ等

※壁技は防御の山をより強化するため、または山でないポケモンに防御の山の性能を付与するために存在すると解釈する。

→物理打点への受けの山をBM、特殊打点への受けの山をDM、永久回復みがまもの山をEM、積み技+回復技の山をGM(GBM、GDM、GEM等の応用も可能)吠える又は黒い霧の山をRMとする。

▶攻撃の山(一般的にはストッパーと言われることもある)

①「流し」や「誤魔化し」の役割を持つポケモン:メガバシャーモに対するメガボーマンダやカプ・レヒレ等

②高速アタッカーのポケモン:カプ・コケコ、フェローチェ、ゲッコウガ、メガゲンガー、スカーフカプ・テテフ等

③高い耐久又は耐性且つ強力な先制技を持つポケモン:カイリュー、ウインディ、マリルリ等

④行動保証があり打ち合いに強いポケモン:ミミッキュ、襷キノガッサ、カイリュー等

※トリックルームはドサイドンなどの低速高耐久アタッカーを攻撃の山に変換するための技と解釈出来る。天候でS+2の特性を持つポケモンへの天候書き換えも同様。

→流しの山をFM、高速アタッカーの山をHM、先生技の山をIM、行動保障の山をVM(これらも、特殊攻撃の高速アタッカーならばCHMのように応用出来る)とする。

また、新たな「山」の概念が必要となれば、随時追加する。

●崩し

▶遅い崩し

①永久的な定数ダメージでの崩し:毒々、火傷、呪い、宿り木等を使用するポケモン

②PPを枯らす動きでの崩し:食べ残し身代わり守るスイクン等

③滅びの歌を使うポケモン:メガゲンガー、ニョロトノ等

④一撃技を使う決定力重視:グライオンのハサミギロチン、ドリュウズのつのドリル、スイクンの絶対零度等

→遅い崩しをSDとする。役割が山とも両立出来るときは、GEM-SD(食べ残し熱湯瞑想身代わり守るスイクン等)の用に表記する。
定数ダメージの崩しをSLD、PP枯らしの崩しをSWD、滅びの歌の崩しをSPD、一撃技の崩しをSKDとする。


▶速い崩し

①打点的な決定力重視:電Zカプ・コケコ、眼鏡カプ・テテフ、猫捨て身メガガルーラ等

②相手を眠り状態、又は麻痺、火傷にさせる決定力重視:キノガッサ、メガゲンガー、化身ボルトロス、ジャローダ等

③単体の積みによる抜き性能重視:珠パルシェン、竜舞メガボーマンダ等

④積みバトンによる抜き性能重視:剣の舞バトンバシャーモ、Zバトンイーブイ等


→速い崩しをFDとする。決定力重視の崩しはFOD、抜き性能重視の崩しはFADとする。また、決定力と抜き性能に負の相関がないことにより、決定力と抜き性能のどちらも兼ね備える場合はどちらの要素が濃いかでFOAD、FAODと表記する。
打点的な決定力をFOZD、状態異常による決定力をFOTD、単体積みの抜き性能をFAGD、積みバトンによる抜き性能をFABDとする。

以上のように、一通りの記号化を経て、shade氏の協力により各「山」と「崩し」のタイプ相性表的な相互関係を、仮設的に私の主観の元、数値評価して入力し、それをグラフ化したのが以下の図である。



図1「山の性能比較」→これは縦軸数値が高いほど「山」としての性能が高い
 


    図2「崩しへの抵抗値比較」→つまり縦軸数値が低いほど「崩し」の性能が高い

以上のグラフを考察すると、「山」は単なる「物理受け」や「特殊受け」では最早成り立たず、「積み」+「回復」又は「展開対応技」+「回復」で初めて山と見なすことが出来るということが分かる。また、次に強力な「山」とは「行動保障」を持つ展開ポケモン、つまりミミッキュやカイリュー、襷霊獣ランドロスなどであり、これも現状のプレイヤー達の認識と大きく乖離はしていない。
それから、「崩し」の性能を比較すると、最も強力なのは「バトン展開が成功する前提での各種エース」となり、結果として「サブウェポンとしてのバトン展開」の有用性を示唆する結果となった。次に強力な「崩し」とは「回復性能+毒や呪いなどの定数ダメージによる突破力」となった。これで身代わり+回復+毒のゴツゴツメットHBクレセリアなどの「崩し」としての強さが示された。つまり、第6世代でのゴツゴツメットのHBクレセリアは「弱い山であり、強い崩し」であったことが分かる。

以上より、ノーマル技+龍の舞+羽休め+身代わりの調整メガボーマンダが「山」としても「崩し」としても非常に強力であることが、今回のデータ処理でも裏付けられた。
そのため、この結果はある程度プレイヤー達の認識と合致しており、この結果からの未だ見ぬ強力なポケモンの型の開拓に貢献出来る可能性すら含んでいる。


◇今後の考察目標

今回の考察で「山」と「崩し」の概念を新たに作ってシングルバトルの理解を進めた。
しかし、このままでは一つの対戦での交代を含む複雑な要素はまだ説明しきれておらず、サイクル戦のダメージレースを追うための理論の補強が必要とされる。

そこで、「「山」となり「崩し」を行うのは「駒」である」として、「駒」の交代で生まれる隙を「谷」と表現してみることにした。そして「山」と「谷」が揺れ動く度に、対戦初期にあった「エネルギー」又は「資源」が互いに減少していき、最終的に0値で収束した方が敗北するといったモデルでも説明が出来るのではないかと考えた。

そうすると、シングルバトルの開始から勝敗が決するまでの一連の流れは、(sinx)/xの軌道のような「波」と表現出来る。


このように、「波動」のモデルとして表現出来れば、シングルバトルの対戦理論は数学的、物理学的なアプローチさえ可能になるのではないかと期待している。

今後は上記のような基礎理論の再検討と、記号化をやり直した上でのデータ処理の精密化を目標としたい。


参考資料:役割理論

参考資料:実践理論等(第5世代以降の対戦理論

2017年7月25日火曜日

【シングル】役割理論について簡単に解説 -対戦理論記事連載 第1弾

■役割理論

◇用語

・ダメージレース:お互いのポケモンがダメージを与え合う速度の競り合い。ダメージレースに負けるとそのパーティは敗北する。

・役割:自分のパーティのポケモンがそれぞれ、特定のポケモンや並びに対処するための仕事を請け負っていること。「◯◯は△△に□□の役割を持つ」のように使う。

・受け: 相手のポケモンからの最もダメージ量の高い攻撃を、回復技を利用することで継続的にHPを維持することが出来る役割。

・流し(潰し):自分のポケモンが、素早さや使用可能な技、タイプ相性を考慮したうえで対面しているポケモンを確実に倒せる状態であり、相手は交換せざるを得ない状況を作る役割。

・誤魔化し:特定の条件下で受けや流しが成功する役割。

・サイクル:お互いが交代を交互に行った結果、特定の周期を繰り返すこと。

・役割破壊:自分のポケモンに対する相手のポケモンの役割を、相手が想定することが困難な手段を使って防止して倒すこと。

尚、役割理論での「役割」の種類は上記だけではなく、理論を応用させることによって、多岐にわたる。


役割理論とは、上記の考え方を用いたポケモンシングルバトルの最も根幹を説明出来る理論であり、対戦中の無意識的なダメージレースの思考を、各役割を用いてモデル化したものである。
プレイヤーはこの理論を前提として「読み」や「ケア」、「釣り交代」といった、自分を有利な状況に導く行動を採る。